日記とかブログとか雑談とかなんかそんなもの

ブログというか日記というか雑談というか、なんかそんなものです。このブログをご覧いただく老若男女諸兄にお伝えしておく。ここに有益な情報など一切ないと。貴重な時間と資源を無駄使いし、ただただ無益で阿呆なことしか書いていないことをここに表明していく。それでも尚、お付き合いしていただければ喜びます。

吉野家のボパさん

先日のことである。

 

湾岸地域であった某イベントに参加し、終了したのが午前4時半であった。

 

 

前日に夕食は食べていたものの、一晩中起きていれば明け方には無性に腹が減るものである。

 

 

カロリーが欲しい。

 

 

身体を動かす為の熱量を欲しているのだ。

 

 

始発までは約1時間ほど。

 

 

コンビニエンスストアはあるものの、もっと温かいものが食べたい。

 

 

何か、何かないのかととぼとぼと歩いていくうちにオレンジ色に光り輝く場所があった。

 

 

そう、みなさまご存知吉野家である。

 

 

早い、安い、うまい、でお馴染みのかの吉野家である。

 

 

牛丼、いいじゃないか。

 

 

そう俺の腹は牛丼を欲していたのだ。

 

明け方前の底冷えする寒さで身体は悲鳴を上げている。

 

 

一刻も早く、店内に入らねば。

 

公然と輝く吉野家は、さながら砂漠の中に現れたオアシス、

真夜中のドライブウェイ、

エデンの園である。

 

自動ドアをくぐると深夜ながらに店内にはまばらながらも数人の客がいた。

 

 

しかし、店員の数は2人のみ。

 

どちらも外国人の方であった。

 

バイトリーダーらしき中国系らしき女性が一人(仮にメイさんとしておく)

 

 

最近バイトを始めたらしき東南アジア系の男性が一人(仮にボパさんとしておく)

 

 

深夜のファーストフード店に外国人労働者方々のみ。

 

 

昨今の若者は賃金の安い飲食店で働きたがらぬというが、私は今その縮図を目の当たりにしているのかもしれない。

 

 

いや、そんなことよりも僕は腹が減っているのだ。

 

メニューを吟味しながら、牛丼の並とお新香セットを注文する。(味噌汁はちょっとリッチにプラス100円で豚汁へと変更した)

 

 

いつもなら、わずかな待ち時間も空腹と徹夜明けの極限状態においては永遠のごとく感じられる。

 

早く、

 

 

早く、

 

 

 

早く、牛丼よ来い。

 

 

待ち時間の中、ボパさん(仮)が来店直後にさっと差し出してくれたお茶をすすりながらメイさん(仮)とボパさん(仮)の様子を何とはなしに見ていた。

 

 

メイさん「用意終わタ?。注文ハ?」

 

 

ボパさん「オワリましター」

 

 

メイさん「終わっタんなら自分で仕事見つけて動かないとダメヨ」

 

 

ボパさん「ワカリマしたー」

 

 

どうやら入って間もないボパさんをメイさんから軽くお叱りを受けているようだ。

 

 

若干訛りが残るメイさんがバリバリ片言のボパさんを叱っている。

 

 

この構図も現代の日本の労働社会の縮図なのかもしれないなどと考えることもなしにボーっと待っていた。

 

 

そして、待ちに待った牛丼が運ばれてきた。

 

 

紅しょうがと七味とうがらしをたっぷりと載せ口へと運ぶ。

 

 

旨い。

 

 

ただ、旨い。

 

 

カロリーが

 

 

カロリーが染み渡る。

 

 

ああ、僕が食べたかったのはこういうものなのだ。

 

 

いいじゃないか牛丼いいじゃないか。

 

 

などと一人で「孤独のグルメ」ごっこをしながら食事をすすめた。

 

 

 

ふと気がつけば、湯呑みが空になっていた。

 

 

しまった、待ち時間にもお茶をすすり、食事中にも喉を潤していた為、残りはほとんど空である。

 

 

 

おかわりが欲しい。

 

 

しかし、おそらく私と同じイベント終わりで流れてきたであろう客たちで店内はわずかながら賑わっていた。

 

 

メイさんもボパさんも忙しく動き回っている。

 

 

このような時にお茶を頼むのは気がひける。

 

 

 

頃合いを見計らって声をかけよう。

 

 

 

その時である、ボパさんがこちらを見ている。

 

 

 

そして驚くべきことに、彼は新しい湯呑みに熱々のお茶を入れ

 

 

 

僕の元に持ってきてくれたではないか。

 

 

 

なんということだ

 

 

 

私はまだ一言も発していない。

 

 

 

お茶が欲しい、とも

 

 

おかわりをください、とも

 

 

ボパさんもまだ他の仕事が残っていることは明白である

 

 

 

にも関わらず、彼は私の湯呑みが空なことに気づき

 

 

おかわりを持ってきてくれたのだ。

 

 

神だ。気遣いの神がそこにいた。

 

 

お・も・て・な・し」の精神がそこにはあった

 

 

改めて言おう、私はまだ何のサインも発していない

 

 

 

にも関わらずボパさんは私の深層心理を汲み取りお茶を持ってきてくれたのだ

 

 

 

何という洞察力だ。驚嘆するほかない

 

 

 

さらに驚くべきは、新しい湯呑みで持ってきたという点だ。

 

 

 

湯呑みを変える。

 

 

些細なことかもしれないが、こんなことが必ず実践できているのは神楽坂か銀座あたりの高級料亭だけではないのか。

 

 

 

それが、あの吉野家にて実践されている。

 

 

 

素晴らしい。素晴らしいという以外の言葉が見つからない。

 

 

ボパさんは一見してはわからない私のサインを忙しいにも関わらず読み取り、あまつさえ一流の仲居さんクラスのホスピタリティも習得しているのだ。

 

 

 

マスター・オブ・ホスピタリティ

 

 

 

彼のことを表すのにこれ以上の言葉があるだろう。

 

 

 

メイさんの教育の賜物か、吉野家の教育プログラムの成果なのかは、ボパさん自身のポテンシャルによるものかは定かではないが

 

 

賞賛に値する光景がそこには広がっていた。

 

 

 

もはや、お茶もただのお茶とは思えない。

 

 

千利休が淹れてくれたかの如き崇高な味わいがするではないか。

 

 

 

甘露、甘露である。

 

 

吉野家に来たとは思えぬほどの充実感を味わいながら、お茶をすすり飲み干した。

 

 

この気分のまま帰ろう。

 

 

きっと充実した気分のままベットにもぐりこめる事であろう。

 

 

会計を済まそう。

 

 

そう思ったが、レジではメイさんが対応していた。

 

 

仕方がない、しばし待とう。

 

 

すでにお茶の飲み干したので、手持ち無沙汰ではあるが、この充実した気持ちならものの数分程度なんでもない。

 

 

メイさん、貴女の部下は気遣いのできる最高のスタッフです。

 

 

そうするとおもむろに、ボパさんが僕の元に近づいてきた。

 

 

なんであろう?

 

 

そうすると彼は私の元にそっと

 

 

新しい湯呑みでお茶を持ってきた

 

 

ふと彼の笑顔を見ると満面の笑顔である

 

 

ボパさん「ドウぞ」

 

 

なんという事だ。

 

 

彼は私が手持ち無沙汰と見るや、

 

 

お客様を待たせてはいけない、という使命感から

 

 

またもやお茶を持ってきてくれたのだ。

 

 

メイさんに言われた通り彼は自分で自分の仕事を見つめ動いていた。 

 

 

なんということだ。

 

 

ボパさんの気遣いのレベルは私の想像の遥か上をいっていた。

 

 

当たり前のことだが私の食器は空である。

 

 

 

米粒一つ残していない。

 

 

 

食事を終わったことは明白である。

 

 

 

それにも関わらず、彼はお茶を持ってきた。

 

 

 

しかも、新しい湯呑みでだ。

 

 

 

2個目までは分かる、しかし3個目である。

 

 

 

僕の前には空の食器一式と空の湯呑みが2つ、そして新しい湯呑みが1個ある

 

 

 

なんという贅沢さ

 

 

 

僕のような凡人ではいかに食器を少なくするか、という事しか考えられない。

 

 

 

しかし、ボパさんにとっては違うのだ

 

 

 

そんなものは埒外なのだ。

 

 

 

いかにすればお客様に最大の満足を与えられるのか。

 

 

 

その事しか考えていないのだろう。

 

 

 

スパジーバ、マーベラス、グッジョブ。

 

 

 

彼の仕事はプロフェッショナルとしか言いようがない。

 

 

 

素晴らしい、素晴らしすぎる。

 

 

 

ありがとうボパさん!

 

 

 

ありがとうラックフィールドハウス!

 

 

 

まさか牛丼を食べに来てこんな感動に出会えるとは思っていなかった。

 

 

 

ボパさんのサービス能力は常人のそれを超えている。

 

 

 

天上人だ。サービスの天上人がそこにいた。

 

 

 

そうして私はそっと新しい湯呑みに手を伸ばし、一口すすった。

 

 

 

美味い、このお茶は生命の水だ。アクア・ウイタエだ。

 

 

 

なんという美味

 

 

なんという幸せ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもね、ボパさん

 

 

 

僕、もうお腹いっぱいです。

 

 

もうお腹が牛丼と2杯のお茶でタポタポです。

 

 

お茶を差し出されたことで逆に帰るタイミングを逸してしまった。。。

 

 

 

しかし、ボパさんの心遣いを無駄にするわけにはいかぬ

 

 

 

なんとか必死の思い出3杯目のお茶を飲み干し席をたった。

 

 

 

満面の笑顔で送り出してくれるボパさん。

 

 

ボパさん「マタのご来店をお待ちシテおりマース」

 

 

ありがとうボパさん

 

 

充実した時間をありがとう。

 

 

そうして私は始発に乗るべく駅を目指した。